■墓前に誓う公演の成功。

平成11年9月23日我々は愛橘博士のお墓参りを行った。公演のご報告と博士の母上の実家である呑香稲荷神社をお参りし、公演の成功を祈願するためだった。
およそ20人ほどが参集し、墓前に手を合わせた。ローマ字で刻まれた博士の墓碑。父の墓より大きくしてはならないという博士の遺言に従って、どちらかと言えばかわいらしい感じのお墓である。

全員がお参りをし、博士を偲んだ。すると博士の娘「美稲」役の吉田が「あら、この小さいお墓は?」と聞いた。そこには田中舘キヨ子とあった。
愛橘博士の奥様のお墓であったのだが、迂闊にも私はその事を知らず、東京にあるものとばかり信じ込んでいた。
聞いてみると後年二戸にお墓を移した事がわかったが、ご夫婦が寄り添うように眠っていると知って、嬉しくなった。
博士は結婚後、たった一年で奥様を亡くされたからだ。思いがけない発見をした吉田に笑みがこぼれた。
やがて、呑香稲荷神社に移動し成功を祈った。そして、社務所を借りて「あずきばっと試食会」となった。協会一面倒見の良い平がお母さんと二人で準備してくれたあずきばっとであった。
あずきばっとは、愛橘博士の大好物であった郷土料理。しかし、若い団員の中には「食べたことがない。食べてみたい!」という者もあり、この日の試食会となった。
「これが昔のごちそうだったんだねぇ」「結構いけるね」「頑張ろうね!」と大いに盛り上がった。

その後は、神社に行き博士の親戚でもある宮司のお母様に貴重なエピソードを聞かせて戴いた。
我々はいっそう博士のことを好きになり、また大いにその気になった。お話は楽しく、大変勉強になったが、気がつけば辺りは真っ暗になっていた。これには我々もびっくり。あっというまの一日であった。

キヨ子役の沢内はクラブの大会のために参加できず「悔しい。食べたかったのに!」と長い間嘆くことしきりであった。

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