因縁のポスター

パソコン教室があったおかげで一度は断念した公演であった。だが、そのおかげで貴重な写真に巡り会えた不思議。

中村は思った。これはきっと博士のお計らいに違いない。

公演までおよそ1ヶ月に迫ったころ、会長が「そろそろポスターつくって宣伝しないとまずいね」と言い始めた。
協会ではそれまで、特にポスターに力を入れることも無かったから、担当はいない。結局中村が何かひねり出す事になったものの、中村とて雲をつかむような話であった。
いくつかの写真を元に考えてはみても、どうもしっくりせず困り果てた。

ある日、仕事であったパソコン教室に出かけた中村は相馬さんという一人の生徒から一枚の写真を見せられた。「恥ずかしいですけれど、子どもの時の写真です。これをスキャナーして下さい。」何気なくスキャナーで読みとった画像を見た中村は息を飲んだ。
そこには田中舘博士の顔があったからだ。「この人は田中舘博士ですね?」「はい。昭和20年頃、福岡小学校にいらしたときの写真です。」

「お願いします。この写真を使わせて下さい!」
授業中であったことも忘れ、中村は公演の事を話し、お借りする了解を取り付けた。

その夜必死でポスターを作り、みんなに見せた所大変好評だった。「よし。これも印刷しよう。」突然会長が言った。「でも印刷代は?」「ま、何とかなるだろう。今回は出来るだけ宣伝して愛橘博士の事を知ってもらおう。」

これまでは手作りで印刷などしたことがなかったポスターも会長の一言で決まった。嬉しい。だが、費用は大丈夫だろうか?

ポスターの元となった写真はこちら

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