ミュージカル「Aikitu」脚本
第一幕三場 その4 伴奏音楽4 サムライの涙 | ||
愛橘 |
(突然飛び出して来る。涙こらえているが、やがて堰を切ったように泣き出す。 …・・少しのち、父稲蔵が愛橘を捜しに出てくる。) |
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稲蔵 | 愛橘。泣ぐな。 | |
愛橘 | はい(だが涙は止まらない) | |
稲蔵 | 何して泣いでる | |
愛橘 | お父(ど)さん。おかさまなして死んだのすか。おかさま・・・。 | |
稲蔵 |
愛橘。かかさまに死なれで悔しいか。・・・・大事な人を亡ぐして悲しくねぇ人はいねぇ。 それはわしだって同じだ。・・・だども愛橘、わしを見ろ。泣いでるか。 |
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愛橘 | (一度父の顔を見上げ、泣きながら首を振る) | |
稲蔵 | 泣ぐな。侍は人前で泣いてはわがね。泣ぐな。 | |
愛橘 | ・・・はい。 | |
稲蔵 | 愛橘。武士たるものは、いつ死んでも悔いがねぇように、毎日が真剣勝負だんだぞ。お前は武士の子だ。おがさまが死んだ位で泣いでだら、お母(が)様も浮かばれまい。泣くな! | |
愛橘 | はい。泣がない。愛橘は泣がない。 | |
稲蔵 | よし。それで良い(稲蔵去る) | |
(愛橘一人こらえているが、どうしても涙が止まらない。やがて、下手へ走り、物陰に隠れるようにして大声で泣き出す。) | ||
美稲 | 晩年の父は、よく子供の頃の話を聞かせてくれました。 | |
愛橘A |
(声のみ)おらも早ぐ強ぇえ侍さなったくて、毎にぢ竹刀振るんだども、五十も振れねうぢに、へろへろどなってなぁ。……お父(ど)さんの竹刀は、ヒュンヒュンって良い音っこしてなぁ。 それが出来ねもんだがら、悔しくて悔しくて。なんぼが、稽古したもんだがなぁ・・・。 |
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美稲 | まるで目の前に敵が居るように本気で刀を振る父でした。私は思わず身をよけながら、話を聞いたものよ。・・・そのときの父は、本当におサムライでした。 | |
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