ミュージカル「Aikitu」脚本
第一幕 第六場(父の死)愛橘B 伴奏音楽6 慟哭 | |||
(風の音しばらく聞こえる。舞台には雪が舞い、ふぶきになる) | |||
美稲 |
明治16年12月。愛橘が晴れて助教授になるそのわずか20日前のことでした。突然郷里の福岡から愛橘に電報が届きました。父稲蔵が五日切腹したという知らせでした。 やっと父に恩返しが出来ると思った愛橘に、稲蔵の突然の死は、ただひたすら無念でした。直ちに愛橘は福岡へと向かいました。冬のみちのくを雪をこぎ夜も昼も休むことなくたった5日で走り抜け、福岡へ駆けつけました。そして6日目の朝。 |
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(吹雪。そしておさまる。かすかに雪が降っている、愛橘にピン) | |||
{音楽7} | |||
愛橘 |
♪夜が明けた。ここは・・、末の松山だ。 帰えってきた ふるさとへ お父(ど)さん 帰ってきました 愛橘が・・。(やがて、膝を折り、声を殺して泣き出す。) |
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幸子 | えっ!東京から二戸まで五日もかかったの?新幹線なら3時間もかからないのに。 | ||
ミーネ | そのころは東京から福岡までは、十二日かかるのが普通だったの。だから博士が5日で福岡に帰ったのは、大変なスピードなのよ | ||
恵美 | ふーん。すごいのね。お父さん思いの博士なのね。でも博士のお父さん、どうして切腹なんかしたのかしら? | ||
美稲 |
稲蔵の切腹の理由はよくわかりません。でも、その理由が何であれ、侍として生き、そして死んでいった、父稲蔵の生き様は、深く愛橘の胸に刻み込まれました。 それからの愛橘は、ひたすら物理の道を突き進みます。日本各地を駆けめぐり、重力、地磁気の測定に没頭します。まだ交通機関さえままならない時代、愛橘は馬に乗り、歩き、必死に研究を続けました。 |
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