ミュージカル「Aikitu」脚本
第二幕 第十場 その1(結婚新婚)愛橘B | |
美稲 | 明治24年7月、愛橘は理学博士となりました。東大教授として日本の物理学を教え導く立場になった愛橘はますます仕事や勉強に没頭します。しかし、地磁気測量の為に全国を駆け回っていた愛橘ももう37才でした。そろそろ身を固めようと、明治26年4月3日、盛岡出身の本宿キヨ子と結婚します。 |
愛橘がたった一人で盛岡の本宿の家に現れ、キヨ子に結婚を申し込んだその日、元宿の家には親類中の者が集まりました。そしてかわるがわる愛橘を覗きこんでは、あれ!まあ!と驚きの声をあげました。 当時の盛岡では洋服をきちんと着て、顔には立派な髭のある大学の博士というのがよほど珍しかったのです。 愛橘は、ただ黙って石の様に座っていたと言います。やがて、母キヨ子との新婚生活が始まりました。 |
|
伴奏音楽8 喜び | |
(愛橘座ってキヨにあれこれといじられている) | |
愛橘 | これ、これ。はぁ、いい。いいでば。 |
キヨ | いいえー。良くねのっす。 |
愛橘 | いや、いい、男は見てくれなんどかまうものではない。白髪の一本や二本かまわねでねぇか。 |
キヨ | 一本や二本?。それだば、あだしもこんなことは至しあんせん。 |
愛橘 | まんず、100本や200本でもかまわね。 |
キヨ | 100本や200本?先生鏡ごらんになってあんせ。(鏡を取り出し見せる) |
愛橘 | むう。1000本や2000本あってもいいでないが。 |
キヨ | いいえ、わだしがお側にいながら先生に恥をかかせる訳には行きあんせん。動かないで! |
愛橘 | う。あ、はい。 |
キヨ |
(にっこり)わたしの大事な人に恥をかかせる訳にはいきあんせん。それに・・。 (恥ずかしげに)いや!。 |
愛橘 | ?な、なした?どうなった? |
キヨ | それに・・・(愛橘のぞき込む)いやん。(愛橘ガク!) |
愛橘 | ・・・・・。 |
キヨ | それに・・・・(愛橘を押しのけ)いやん、おしょす(恥ずかしい)がんす。 |
愛橘 | おしょす?なに、何がどうなったずのだ。キヨ。・・キヨ子! |
キヨ | (にっこり、うつむく、にっこり、うつむく、にっこり、うつむく。愛橘心配する。キヨ、ゆっくり顔をあげ、愛橘の耳にささやく) |
愛橘 | なにど!ほんとが! |
キヨ | (にっこりうなずき、顔を隠す) |
愛橘 |
ほんとが!ほんとに、ややができたが。そうか、できたが。でかした。うんうん。でかした。 おい菊、お菊さん! |
キヨ | だめ!(呼ぶのを引き留め、そうっと愛橘の胸に顔を寄せる。愛橘子供をあやすようにキヨの背中を優しくたたく) |
{音楽11} | ♪大事な人 かけがえの無い とても とても 大事な人 |
国のために 命をかけ ひたすら わが身を投げ打つ人 | |
まるで子供のように 瞳輝かせ 寝る間も 惜しんで 働く人 | |
ほんの少しでいいから 私のことと | |
そして 小さな命を 忘れずにいて | |
|