ミュージカル「Aikitu」脚本

第二幕 第十一場(風筒)愛橘A
 
弟子1 明治37年(1904年)日本とロシアは戦争に突入しました。戦争は愛橘博士の運命をも、大きく変えていきます。
弟子2 日露戦争で日本軍は気球を敵情偵察に利用し効果をあげました。しかし、気球は爆発の危険も高く、扱いはやっかいでした。これに困った陸軍は、愛橘博士に協力を要請します。
弟子3 愛橘博士は気球の改良や。安全で短時間にできる水素注入装置を発明します。この功績で博士は勲章と賞金をもらっています。
弟子1 日本の航空と博士との関わりが始まった頃、海外ではライト兄弟がエンジン付きの複葉機ライトフライヤーで世界初飛行に成功しています。
弟子2  いまや空は気球や飛行船の時代から、飛行機の時代へと変わろうとしていました。
弟子3 明治40年、パリの国際会議に出席した愛橘博士は、西洋のめざましい進歩に驚くと共に、「これからは日本も飛行機の時代だ」と確信しました。帰国後博士はさっそく基礎的な実験に取りかかりました。
 
愛橘 (声のみ)おおい、諸君ちょっと手伝ってくれ
弟子1 あっ、舘先生が呼んでおられる。なんだろうか。
弟子2 詮索する前に行かないとまた雷が落ちるぞ。行こう。
弟子3 まったく、パリから帰ったとたんにこうなんだから、舘先生は凄まじいよ
愛橘 こら、聞こえんのか!
弟子達 はい。すぐ行きます。(ばたばたと下手へ、やがて長持ちをかかえ登場)
愛橘 うん。そこで良かろう。
弟子達 よっこらしょ。
 
弟子1 先生。これは長持ちではありませんか。
弟子2 これを、パリから買ってこられたんですか?
弟子3 おい、長持ちは日本にしかあるまい。舘先生、これで一体何をするんですか?
愛橘 飛行機の研究である。
弟子2 あははは、長持ちが一体どうやって空を飛ぶんですか。
愛橘 誰が長持ちを飛行機にすると言ったのだ。ウンジンである!。
弟子1 …・しかし先生。長持ちと飛行機とではとても違いすぎて、ちっともわかりません。
愛橘 この長持ちのこことここに穴をあける。更にこの横をくりぬきガラスをはめ込む。
弟子達 はぁー・・。穴ですか。
愛橘 まだわからんか。いいか、こちら側の穴からモーターで風を送り込むするとどうなる。
弟子3 風が吹き抜けます。・・・そうか、風の流れを見ることができる。そうですね先生!
愛橘 はっははは。んだんだ。西洋では風洞というものがあって、プロペラや飛行機の羽が、どのように風をきるのか盛んに研究している。しかし、我が国にはまだ風洞の装置などない。
そこで、これが役に立つ。
弟子1 そうか、この風洞は小さいだけで、充分研究に使えるんだ。そうですね!
愛橘  まぁ、風洞というには小さかろう。だからわしはこれを風筒と呼ぼう。
弟子達 風筒ですか。なるほど。(F.O.)


後に東大に作られた、日本初の3m風洞前の愛橘博士
 

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