ミュージカル「Aikitu」脚本

第二幕 第十二場 その1{愛橘五十四才}(プリウール)伴奏音楽10 飛翔
 
美稲 まるで、おもちゃのような風筒。しかし、この風筒から日本の航空の研究は始まりました。飛行機時代に備え、愛橘は基礎研究に没頭します。ある日、この噂を聞きつけた、海軍大尉相原四郎と、フランス大使館付きの海軍中尉ル・プリウールがやってきます。
ル・プリウールはグライダーの実験と研究を行っていましたが、どうしても飛ばすことが出来ずに相原と相談に来たのです。
それを聞いた愛橘はたちまち意気投合、大いに指導、協力し、三人は夢中でグライダーに
取り組み始めます。
 
(研究室では相原大尉と愛橘博士がグライダーの模型をもって、まるで子供の様に走り回っている)
相原 つまりグライダーはこんな風に風に乗って、こんな風にとぶのであると私は思います。 (グライダーをもってキーンと走り回る)
愛橘 いやいや、ほだない。このグライダーはエンジンを積んだときにもちゃんと飛べる様に設計すたんだすけ、綱でひっぱればそうは飛ばないべ。理論的には重心の位置が変わるがらもっと平らに。
いいが。(グライダーを取り返して)はじめは浮力がちゃっけえがら、離陸するときはこう風をうけるはずだ。(とばして見せ)それから昇降舵でこう・・・
相原  先生(グライダーを取り返し)私はそうは思いません。いいでありますか。離陸するときはこう
愛橘 ほだない(グライダーを取り返し)こんな風にだな。ちゃんと見でろよ。(とばす)
相原  ほら落ちた。私が言ったとおりだ。
愛橘 なにど!風筒の実験でもちゃんとそうなると出ているんだ。(バタバタとオートバイの音近づく。プリウール布地の束抱え入ってくるが愛橘夢中でわからない)
いいが。耳の穴かっぽじってよおぐ聞けよ。我々の目的はこの模型を飛ばすごどではないべ。飛ばすのは本物のグライダーだ。ずっけんや理論だけでは実用にはならねえ。模型がなんぼ上手く飛んだところで、本物が飛ばねば何さもならねぇ。
ルプ とれびあん、トレビアン!さーすーが、ドクトゥー愛橘。そーのとりです。
相原 や、プリウール君。いつの間に。
ルプ  ひぃ、ふう、みぃ・・。数える位前です。
相原 あぁ、ちょっと前からですな。
ルプ うぃ。ちょと前。ドクトゥー、つばさの布買いました。これ、どう?
愛橘 おお、ごぐろうさんであんした。どれどれ。(布を広げ引張る)うん。おお、これはいい。
いいキャラコだ。きっと飛びますぞ!(三人顔を見合わせ)あははははは。
ルプ うぃ。きっとこれでできます。(突然下手へ走って行く)
相原 おいおい、プリウール君どこへ行く。全く、ちっともじっとしていない。夢中になるとまるで子供だ。これじゃあ、舘先生と同じだ。
愛橘  は、何か言ったか?
相原  いえ、いえ、何も。
愛橘 全くプリウール君はよく動く。熱中すれば何も見えない。まるで子供だ。大尉と一緒ですなぁ。
相原 さよう、全く子供で・・はぁ!?はは、あははは、あっはははは。
愛橘  わはははは。
ルプ さぁ、つばさつーくーるね!(補助翼のフレームをかつぎ込んでくる)
相原 プリウール君。ところでこの布はいくらしましたか。
ルプ  えとー。あっちの竹とこれで・・。えと、ひぃ、ふう、(指折って)じゅきゅー円?
相原 十九円ですか。
愛橘 いがべ。その分はワシが払うべ。
相原 舘先生、良いのですか?
愛橘 なんもなんも。それ位は当然だ。3人で作ってるのだすけな。
相原 舘先生。ありがとうございます(深々と頭を下げる)
ルプ メルシー、メルシー。(抱きつく)
愛橘 なんもなんも。さ、いよいよ空飛ぶ飛行機ができますぞ。あっはははは。
相原 すると全部では・・。我々3人の飛行機は50円でできたことになりますな!
ルプ うぃ。三人のひこき、がばりましょう。わははははは。(三人大笑い)
相原 それにしても、国家がもっともっと飛行機に理解があればもっと立派な研究ができるのに。陸軍は未だに気球がどうのと言っておる。舘先生がこれからは飛行機の時代だと力説してくださらなければ、我が日本は大いに遅れをとっていた。だがまだまだこれを理解できない人も多い。誠に残念であります。
愛橘 大尉。求めよさらば与えられんですぞ。来るべき飛行機時代のために、我々だけでも基礎実験を続けておくのです。あっというまに飛行機の時代がくる。それをわかってもらうためにもこの実験は成功させねばならん。さあ、頑張りましょう
ルプ さ、もすぐひこーきできますね。きっと飛びますね。
愛橘 そうじゃ。さぁ力をあわせて作ぐるんべ。

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