ミュージカル「Aikitu」脚本
第二幕 第十二場 その2(グライダー) | |||||
子供ABCパート(愛橘、相原、プリウール、新渡戸は大人)(レプリカのグライダー下手にある。3人のみ) | |||||
ルプ | いよいよ、ですねー。せと(生徒)達来ない。 | ||||
相原 | 落ち着け、落ち着け。舘先生が新渡戸校長にお願いしたんだから間違いはない。一高の生徒達も、もうすぐくるだろう | ||||
ルプ | うぃ。けどこの広いテランみたら。もー落ち着けない!。飛びたい! | ||||
相原 | テラン?ああ、運動場。広い運動場ね。わはは。だが、こんな時舘先生なら、肝が練れていない。ウンジンである!と一喝されるぞ。 | ||||
ルプ | ノン・ノン。ドクトゥーのほーが待てない。・・ほらね。(愛橘うろうろと落ち着かない) | ||||
相原 | (プリウールも動き回る)おいおい、プリウール君。君は舘先生にそっくりだな。 | ||||
ルプ | うぃ。ドクトゥーすごい人。そっくり?嬉しいね。でも、アイバラもドクトルと同じ。 | ||||
相原 | 何、私が舘先生と同じだって。いったいどこがだね? | ||||
ルプ | サムライ。私わかる。アイバラ、サムライね。ドクトゥーもっともっとサムライね。 | ||||
相原 | 私はともかく、確かに舘先生は、我々軍人などよりも遥かにサムライだ。すばらしいお方だ。 | ||||
ルプ | おー。来た、来ました!キタ!キタネ!(学生=子供達。後方から新渡戸やってくる) | ||||
愛橘 | やあ。新渡戸校長。本日は本当にありがとがんした。 | ||||
新渡戸 | いいや。なんもなんも。礼をいうのはこちらの方です。生徒たちさ、まだ見た事もない「飛行機というもの」を教える事ができる。飛行機は今世界で一番先端の科学ですからな。それに、何より舘先生のお願いをお断りしたとあっては、南部(今の岩手県)の連中になんと言われるか、わかりませんからな。わはは。 | ||||
愛橘 | わはは。新渡戸校長、彼がフランスの海軍武官ル・プリウール、そしてかれは海軍の相原君です。新渡戸校長はワシと同じ南部の出身でな、100年もすればこの顔が「お札」になる程立派なお方、国際人であられる。(二人、新渡戸と挨拶、握手かわす) | ||||
新渡戸 | 生徒諸君。今日君らが体験する飛行機を飛ばすという実験は、これが成功すれば「日本の科学の力が西洋諸国にけっして負けない」事を証明する、実に大事な実験である。この実験に参加できる事は君らの名誉である。全力をもってこれにあたってほしい。諸君の検討を祈る。 | ||||
愛橘 |
んだば、ちみらはむごうさ行って、このロープを合図とともに引っ張ってください。 (ルプリウール飛行機に乗り込む)相原君いいかね。 |
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相原 | 準備完了です! | ||||
愛橘 |
それ、ひっぱれ!はしれ!(学生=子供達上手に綱を引いていく。)それ飛べ、それいけ! (やがて飛行機は動き出すが浮かばず、上手に止まってしまう。) |
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相原 | くそう。さっき無人でやったら、確かに飛んだんだ。どうして今度は飛ばないんだ!。 | ||||
愛橘 | いや、重さの割りに引く力が足りないのだべ。んだら今度はワシが載って見る。なんぼがは軽がべ。(愛橘、飛行機に乗り込む) | ||||
新渡戸 | 舘先生、そんなものにのって大丈夫ですか。操縦の経験は? | ||||
愛橘 | なーに。のるのは初めてだが、ワシは自転車さも載れる。同じよんたものです。 | ||||
新渡戸 | は?飛行機は自転車と同じですか・・。 | ||||
愛橘 | はっははは。まぁ、なす。さぁ、いいぞ、ずんび完了! | ||||
相原 | それー、ひっぱれー。 | ||||
ルプ |
とべ、上がれー。(飛行機は動き出すが浮かばず、やはり上手に止まってしまう。) オー。なぜ飛ばないねー。ドクトゥーだいじょぶ? |
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愛橘 | やはりもっと強い力でねばわがねぇが。よす、次には自動車で引っ張ってみよう。 | ||||
ルプ | ドクトゥー。子供なら軽いね。子供どうかな。 | ||||
愛橘 | ほだなあ。・・よす。(見回す)ああ、そこで見物してるのは知合いの子供だ。だば親さ頼んでみるべ。(客席に下り、子供連れで戻る)親の許しは取った。さあ、もう一度実験だ。 | ||||
(子供を載せたグライダーはふわりと舞い上がる。全員狂喜乱舞の大喜び・暗転 | |||||
{音楽12} |
FLY(鳥のように) ふわり (風に乗って) さあ はじまるよ (新しい時代が) |
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美稲 |
一高校長、新渡戸稲造の協力によりグライダーが空をとんだのは明治42年12月5日の事でした。子供とはいえ人間を載せて空を飛んだことは、愛橘たちに大きな勇気をあたえました。相原、ル・プリウールと愛橘の三人はますます夢中になって改良を続けました。 そして、四日後の12月9日、愛橘達の作ったグライダーは、上野「忍ばずの池」上空を見事に飛んだのです。その高度4メートル、飛行距離100メートル。ついにル・プリウールは東洋で始めての飛行に成功したのです。 これを見て、今度は相原大尉が乗り込みました。愛橘達の見守る中、グライダーはするすると上昇を始めました。ところが、相原大尉は操縦を誤り、緩やかに飛んでいた機体は急に大きく傾きました。機体はそのまま失速。 ああーっ!。突然引いていた綱が切れあっという間にグライダーは墜落。・・皆は驚き息を呑みました。やがて池の中から泥だらけの大尉が這い上がって来ました。まっ黒な大尉を見た愛橘は、グライダーが壊れたことも忘れ、子供のように大笑いしていました。 |
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元気 | あれ、日本で始めて空を飛んだのは、明治43年12月19日、徳川大尉だよ。 | ||||
ミーネ | そうね。でも間違い。 | ||||
元気 | だって、僕はちゃんと本で調べたよ。 | ||||
ミーネ | 間違いなの!第一、君。その時本当に初飛行に成功したのは日野中尉で12月14日なのよ。 | ||||
元気 | へ? | ||||
ミーネ | とにかく徳川大尉よりも前に、確かに日本の空を飛行機が飛んだ。そして、それは、愛橘博士達作ったグライダーなの。 | ||||
修斗 | でもやっぱりこの本にも・・。おかしいなぁ。 | ||||
ミーネ | それはね、ル・プリウールがフランス人で、しかも、相原大尉は墜落してしまった。これじゃぁ日本初飛行と胸を張れないと、誰かがそう考えて「見なかった」ことにしたのね。 | ||||
修斗 | じゃぁこの本にあることは間違いなの? | ||||
ミーネ | そう。もっと厳密にいうなら日本の空を始めて飛んだのは十数人の子供達だった。公式記録の徳川大尉の初飛行だって嘘。結局、初飛行の認定なんて人間の都合で変わるって事ね。 | ||||
修斗 | そうか「ご都合主義ー。」だったのか。でも、それじゃ、愛橘博士はどうなるの。 | ||||
ミーネ | 日本最初の飛行場を所沢につくったのも博士だし、日本で初めて飛行機を飛ばしたのも博士なのよ。だけど、博士はね、そんな事はどうでも良かったの。ただグライダーが飛べば、それだけで良かったのね。 | ||||
二人 | うあぁぁー。納得いかねーーー! | ||||
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