ミュージカル「Aikitu」脚本

第二幕 第九場 その4(地震駆けつけ委員)
 
美稲 このとき愛橘は根尾谷の大断層を発見します。撮影の場所まで細かく指示してとらせた断層写真は、世界中を驚かせました。愛橘は帰京後、帝大理科大学の菊池大学長にこういいました。
「地震そのものに対しては何とも仕方がありません。しかし、それから生ずる災害を軽くする予防策を国家が研究するのはとても大切なことです。なんとか適当な研究機関を創る事はできないものでしょうか。」
これを受けた菊池大学長は直ちに国へ働きかけ、明治25年6月には、文部省震災予防調査会が創立されました。愛橘は、自ら「地震駆けつけ委員」となり各地の地震、火山の噴火の度に全国を飛び回るのです。
 
(舞台暗転・花道にミーネ、ユートン登場、それぞれpinで。)
ユートン 地震駆けつけ委員だなんてダッサダサ。昔の人はなにやってんだろうね。
ミーネ でもね、この「震災予防調査会」は後に地震予知連絡協議会になるの。覚えておいて。当時日本の地震研究は、世界一進んでいたのよ
ユートン 世界で一番?あはは。文明開化からたった20年しか経っていないのに世界一なんて
ミーネ あのねぇ、地震が起こると地磁気が狂う事を、世界で始めて愛橘博士達があの根尾谷の観測で証明したの。
ユートン 世界で始めて?
ミーネ そう。今でも根尾谷を見なければ地震学者とはいえないと言われる位、学術的に大変な発見だったのよ。そして博士は、もっと詳しく研究しようと工夫を重ね、精度の高い地磁気測定器や地震計までも発明しているのよ。
ユートン 発明?日本のエジソン、田中舘愛橘か。ほんとかなぁ。
ミーネ うふふふ。でも、これがおかしいの。あははっはははははっはははは。
ユートン ありゃ、こわれちゃった。やっぱ安物は駄目だなぁ。
ミーネ 失礼ね!壊れてないわ。でもね、うふ。おかしいんです。田中舘のノミ金式!。うふふふ。
ユートン ノミ金?なにそれ!。
ミーネ 電磁方位計。小さな磁石の揺れで地磁気を調べる機械。でも当時の測定器は非常に精度が悪かったの。そこで愛橘博士は考えた。もっと小さい磁石なら精度は上がる。
ユートン なあんだ、そんなこと誰だって思いつくよ。それを発明だなんて!
ミーネ お黙り。(ジロリ)誰が思いつくと言うの「蜘蛛の糸」で磁石を吊すことを!
ユートン くも?蜘蛛の糸?あの8本足の、蜘蛛の糸?嘘ーーーー!。
ミーネ 本当よ。これは昭和の初めまでずっと使われていたの。蜘蛛の糸の先の小さな小さな磁石。それはまるで蚤。いいえ、蚤よりも小さい。
ユートン そうかぁ。つまり蚤よりも小さいのがぶーらぶら。それで蚤のキンタ・・。
ミーネ  ストップ!(スイッチを切るユートン固まる)下品です。(にっこり)失礼致しました。

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