ミュージカル「Aikitu」脚本

第一幕 第二場 (日本のローマ字社)
里美 (上手で)あ?・・・みんな、大丈夫?何があったの、みんな何処に居るの!!
子供たち ここはどこだろう。先生怖いよ!など。(但し、未来、元気、幸子、恵美、修斗はいない)
里美  落ち着いて。静かに。
子供1  あ、誰かの声が聞こえるわ。(里美、あわててみんなを上手に集める)
里美  みんな、とにかく様子をみましょう。じっとしてるのよ。  
(下手明るくなる。田丸卓郎、寺田がいる。・・ここは田丸卓郎の自宅、ローマ字社の活動拠点である。)
田丸  寺田君今日のコーヒーは私の自信作だ。きっとおいしいと思う。まぁ、飲んでみたまえ。
寺田  はっ。田丸先生の自信作ですか。それはそれは。しかしそろそろ舘先生もお帰りになるころ。それまでお待ちしましょう。
田丸 いや、まあ味見をしていただこう。舘先生にまずいコーヒーをさしあげる訳にはいかないから。
寺田  えっ。田丸先生の自信作ではなかったのですか? 
田丸 あっははは。もちろん自信作です。まぁ飲んでみればわかりますよ。(愛橘登場)
あっ。舘先生!。お帰りなさい。議会はいかがでしたか。(愛橘の為にコーヒー用意)
愛橘 あはははは。なんとも聞き違える輩が多くてわがね(駄目だの意の方言)。
「これは便利だ。日本語ば全部ローマ字さ切り替えろ」ずうやつも居れば、「とんでもねぇ。ローマ字論者はみんな西洋かぶれのきちがいだ」と騒ぐものも居る。(座る)
まんずまんず。まぁ気長に、すかす雑念なぐ、ローマ字を広めで行ぐのだ。
寺田  (寺田コーヒカップを置く)はい!。舘先生、私も「海の物理学」というのを日本式ローマ字で書きましたが、ローマ字の道のりはまだまだ遠い。しかし、(寺田も愛橘につられだんだん興奮する)我が日本の新しい言葉を作ろうという大変な事業でもあるわけですから、不肖この寺田も命を(愛橘、寺田のコーヒーを飲んでしまう)い、命・・・
田丸  はははは。まあ気長に頑張りましょう。先生コーヒーをどうぞ。
愛橘 いや、わスのはここに。
田丸  いえいえ先生のはこちらです。それは寺田君の
愛橘  あ!、さぁえ。いやぁ、すまん。
寺田 (怒ったふりで)なんの。いつもの事慣れておりまする。(笑顔になって)あはははは!
全員 わっはははは・・。

愛橘 んだんだ。田丸くん。これを。(にっこりと封筒を差し出す。)
田丸 はっ。ありがとうございます。しかし舘先生、いつも貴族院議員の給料袋を、封も切らずにお渡し下さいますが、よろしいのですか?
愛橘  (にこにこ)田丸君だってローマ字社の為にこうして自宅を提供しているではないか。
田丸 はァ。お陰様でローマ字社の活動資金も助かります。これで会報も発行できます。(一礼)
そうそう。先ほど先生に「航空機の未来」という題で講演のお願いがありました。
寺田 舘先生、先生が言われた飛行機の時代というのが、やっとここにきて世間にも知られ始めました。日本の航空機の未来はいよいよ前途洋々。ローマ字もこう行きたい物ですね!。
愛橘 (にこにことうなずく)
田丸 ですが、・・実は、その席でのローマ字の話はどうかご遠慮戴きたいと・・。
愛橘  なにど!。(立上り激怒する)講演は頼むがローマ字の話はするなだと!んだばこの話お断りする!。
田丸 しかし先生。(愛橘心底怒っている。これを見て寺田なだめるように)
寺田  「日本が世界の仲間になるために。日本語を世界に広めるためにも絶対に『日本式ローマ字』が必要なのだ」は舘先生の信念です。先生はどこに行っても必ずローマ字の話をなさいます。
「んだすけ、日本式ローマ字で日本語を世界に広めねばならないど、かように信(スん)ずるものであります。」という、先生のローマ字演説はいまやすっかり流行語ですよ。
田丸 ははは。寺田君、舘先生そっくりだ。うまいものだ。(3人おおらかに笑い飛ばす)
では、私の方で失礼の無いようお断りしましょう。さて、私も舘先生に負けぬよう、ますます頑張らなくてはなりませんな。
寺田  ほんだほんだ。死ぬ(スぬ)気でがんばれ、ですね舘先生。
愛橘  ほんだほんだ(一同大笑いの中下手暗転、上手子供達に光戻る)
ユートン (下手より登場)ちっ!じゃま者のおかげで、変な時代に飛び込んでしまったじゃないか!。
あっ、そうだ、未来って子供はどこだ!(上手に行きおびえる子供達の顔を確かめ)居ない!くそ、どこへ行った(何か機械をいじりはじめる)
里美 お願いです。この子達を助けて下さい。
ユートン うるさい!(必死で機械をいじる)しかし、このままにすればタイムパトロールに見つかっしまう。しかたない。おまえ達を元に戻してやるから此処に集まれ。
いいか、行くぞ!(ストロボ激しく点滅し舞台は真っ暗に)  

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