ミュージカル「Aikitu」脚本

第一幕 第一場 その1(二戸小学校のとある教室・里美先生を囲んで子供達が集まっている)
 
元気 里美先生、ちっともすてきじゃないよ。めんどくさいよ。
里美 そうかな、私はすてきだと思うんだけどな。みんなはどう?
恵美 私は平気。なんか英語みたいだし、かっこいい。
里美 そうね、並べて書くと英語みたいにも見えるよね。
未来 はい、先生
里美 はい、未来さん。
未来 私は漢字もすてきだと思うけど、アメリカで作られたパソコンにもローマ字が使える事がすごいと思いました。ローマ字を作った人はすごいと思います。
里美 そうね、パソコンはローマ字を使えると本当に便利だし、慣れるととっても簡単ですよ。
ところでみなさんは、この日本式のローマ字を考え出した人のこと、知っていますか?
幸子  はい。田中舘愛橘という人です。
里美  正解。(拍手)幸子さんよく知っていましたね。はい。(パネル見せ)この写真の人です。
元気 なーんだ。しわくちゃのじーさんじゃないか。
未来 元気君、失礼よ!
里美 そうね。さてそれでは田中舘愛橘というひとは何処の生まれか知っていますか?
修斗 はい!はい!
里美 はい、修斗君。
修斗  田中舘愛橘博士は二戸市の人です。
子供たち ええー。ほんと?すごい!へー?など
里美 そのとおり。田中舘愛橘博士は二戸市で生まれました。そして今年は博士が亡くなられてちょうど50年目になるんですよ。
子供たち ふーん。二戸の人、すげー。など
幸子 修斗君、なんで知ってたの?
修斗 あのね、おばあちゃんが子供の時にさ、田中舘博士のお墓を作る小石をみんなで集めた
んだって。でー、その小石に名前とか書いてお墓に一緒に埋めたって。
子供たち ええー。ほんと?うそー!へー?など
里美 すごいねぇ。それは先生も知らなかった。そんな事があったんだ。
修斗 はい、今でも博士のお墓にその小石があるそうです。
 
元気 先生!じゃあローマ字は50年くらい前にできたんですか?
里美 いいえ、博士が亡くなってから50年ですが、1909年に田中舘博士、田丸卓郎博士、たちが「日本のローマ字社」を作ったから、93年前ですね。実際にはもっと以前から研究されていたので、もう100年以上も昔から今の日本式のローマ字が考えられたと言っても良いでしょうね。
恵美   なーんだ。私たち100年前の言葉を習ってるのか。
幸子 でもさぁ、日本語だって1000年とか2000年とかの昔から日本語なんでしょう?
里美 確かに日本も日本語もそのなりたちを考えると何千年の話になるんですねぇ。なんかすごいねぇ。ローマ字そのものは外国の文字、アルファベットですが、それを使って日本語としてきちんと表現できるように研究し、まとめたのが愛橘博士達なんですね。
修斗 そうか、だから「日本式のローマ字」なんだ。
未来 つまりローマ字は、「新しい日本語」って事なんですね!
先生、田中舘博士って言葉の先生だったんですか?
里美 いいえ。田中舘愛橘博士は日本式ローマ字を作ったし、その為に日本語の研究もしました。でも、本当は世界的に有名な物理学者なんですよ。
元気 物理?なんだそれ。
恵美 あら、物理って私たちが習っている理科の事でしょう。
幸子 はい。
里美 はい、幸子さん
幸子 私、博士は今の地球物理学っていうのが専門だって。記念科学館で習いました。
修斗  地球物理学?げー。むずかしそう。
未来 先生、私理科が大好きです。だから物理学もやってみたい。田中舘博士みたいな・・。
 
(雷のような大音響と共に、突然舞台暗くなりあちこちにストロボ、不思議な照明が駆け巡る。子供たち全員そのままのポーズでかたまって動かなくなる。青い光の中にユートン現れる)

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