博士と日本式ローマ字
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 ローマ字の父と言われる愛橘博士が、その生涯をかけて、広めようとした「日本式ローマ字」。だが、その普及には大変な苦労があった。現在はワープロの普及などのせいだろうか、ローマ字は意外に利用されている。博士がこの様子を見たら一体どんな気がするのだろう。

 驚いたことに、明治の始め頃は日本語を全てローマ字にしてしまえという運動さえあった。ついでに書くなら、第二次大戦で日本が敗戦した後にも、日本語を全てローマ字にしてしまえという動きがあった。実際にある地区で全てローマ字で教育を行なうという、大規模な実験がGHQによって行われたという。

 だが、田中館博士が残したものを見ると、「日本語を否定し、全てをローマ字に置き換えよ」と説いている訳ではない。とはいえ、時々の政治にローマ字が利用されたような面も含め、ローマ字の普及には大変苦労したことが伺える。

 何故愛橘博士は(時に政治に利用されかねないリスクも含めて)それ程までにローマ字の普及が必要だと思ったのだろうか。その生涯をかけてまで日本式ローマ字でなければならなかったのだろうか。
その答えの一端が「TOKI WA UTURU」の中に見られる。

 正しい日本語をきちんと表現でき、かつ世界中に通じる言葉。それこそが(日本式)ローマ字であると。「ローマ字で教育の能率を高め、世界と文化を共にすべきである。」と博士は言っている。同時に、「文字は書く者より、読む者のほうが数万倍多いのだから、書き手の手数と読み手の便利をよく比べてみることだ」とも説いている幼い頃から実用流が身に染みている愛橘博士ならではの言葉だ。

 私は、愛橘博士が決して西洋にかぶれ、ローマ字を広めようとしたわけではなく、むしろ日本を愛するからこそ(国語として使用しても矛盾の生じない)日本式ローマ字が必要と考えて、ローマ字普及に一生を捧げたという事実に気付き圧倒された。
 極端な言い方をすれば、世界に対し、「日本が日本を守り、日本人が日本人であり続けるためにローマ字が必要だ」と博士はお考えになられたのだろう。


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